旅行、研究、医療制度の話

こんにちは! インペリアルカレッジ派遣生のmintです。
 このブログもインペリ派遣生内では今回からちょうど二周目に入り、留学期間もあっという間に半分が終わってしまいました。

 今回は、

①夏旅行【中編~イタリア~】(前編~クロアチア~は前回のテツのブログ参照)

②研究生活(一日の流れなど)

 ③GP(かなり真面目な話になってしまったので興味のある方だけどうぞ) 


について書こうと思います。


①夏旅行 【中編 ~イタリア~】

前回のテツのブログにあるように、私たちインペリ派遣生5人は1週間の夏休み(9日間)を利用して、クロアチア・イタリア・チュニジア・マルタ旅行に行ってきました。今回は前編のクロアチアに引き続き、イタリア旅行について紹介します。

まずはナポリ
「ナポリを見てから死ね」というイタリアの諺を知っていますか?(一部ではナポリの治安の悪さから、「ナポリを見たら死ぬ」とも言われているそうですが)これは、ナポリのサンタ・ルチア地区から見えるヴェスヴィオ山と海岸線の美しさをあらわした諺です。その景色がこちらです。



 そして、イタリアの食事といえばピザ!ということで、現地人の間でも特に人気が高いというお店に行ってきました。待ち時間は2時間程でしたが、大きな窯で焼いたピザは絶品でした。





次はポンペイ
歴史の教科書などで見たことがある方も多いと思います。西暦79年に起きたヴェスヴィオ山の大噴火によって町全体が埋め尽くされた後、18世紀になってようやく発掘が開始された古代ローマの遺跡です。火山灰に覆われていたために保存状態がよく、また想像以上に敷地面積の広い遺跡でした。



そしてアマルフィ
アマルフィと聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか?
僕は、昔そんな名前の映画があったなという感じであまり詳しくは知りませんでした。
アマルフィは世界一美しい海岸とも言われるほどの場所で、断崖にへばりつくように立ち並ぶ家々もとてもきれいでした。また、レモンシャーベットやレモンアイスクリームなどもとても美味しかったです。




 最後にローマ
ローマは見どころが多すぎて、一日で回るのはとても大変でした。(僕のスマホによるとこの日は17.2kmも歩いていました。)サンピエトロ大聖堂、パンテオン、ナヴォーナ広場、スペイン広場、トレヴィの泉、コロッセオと暑い中歩いて周りましたが、途中で食べたジェラートは格別でした。ジェラートはイタリア発祥です。




②研究生活


キャンパス
僕が所属している研究室はハマースミスキャンパスという場所にあり、寮から最寄りのサウスケンジントンキャンパスからシャトルバスで約30分、チューブ(地下鉄)を使うと徒歩を含めて寮から約50分のところにあります。このキャンパスのほとんどはインペリアルカレッジ系列の病院であるハマースミス病院が占めているですが、その構造が複雑すぎてよく患者さんに道を聞かれます。また、あまり大きなキャンパスではないのですが、病院内も含めて食堂やカフェがいくつかあるので昼食には困りません。

研究内容
免疫チェックポイント阻害剤に関する研究をしています。ニボルマブ(オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害剤は、癌治療において劇的な効果をもたらすことで近年注目を浴びていますが、この治療薬を用いることができる癌のタイプは限られており(非小細胞肺癌、悪性黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌など)、また実際は多くの患者さんが抵抗性を示す(治療効果が得られない)ことが知られています。僕が今回やらせていただいているのは、この治療効果の推測のための研究です。具体的に、現段階では、組織標本からのDNA抽出やRNA抽出、病院の電子カルテのようなものにアクセスして免疫療法を受けた患者のデータ収集などをやっています。研究生活が始まった当初は、このデータ収集の際に必要とされるIDの取得とパスワード設定に時間がかかり大変でした(日本語で書かれた運転免許証まで提示しました)が、最近の平均的な一日の流れは、

9:00 シャトルバス出発
9:4015:00 研究室到着、実験開始~実験終了(実験の待ち時間に昼食など)
15:3017:00 電子カルテにアクセス、患者データ収集
17:00 シャトルバス出発(帰宅)

のような感じです。スーパーバイザーとは月曜日にミーティングをするほかはメールで連絡をとり、実験及びデータ収集は基本的に一人で行っています。

実験スペース

病院の診察室にてデータ収集


以下、真面目なイギリス医療制度の話です。

GPについて

インペリ派遣生にはそれぞれパーソナルチューターが付いて下さるのですが、僕のチューターの先生はGPとして働いておられ、インペリアルカレッジで学生にクリニカルコミュニケーションを教えていらっしゃる方です。彼女の紹介で、現在GPとして病院で働いておりかつインペリアルカレッジで学生にプライマリ・ケアの教育をしている方のシャドウイングをさせていただくことができました。以下、この機会に学んだことを書きます。

そもそもGPとは(イギリスの医療制度)
GPとはGeneral Practitioner(あるいはGeneral Practice)のことで、日本語では総合診療医(あるいは総合診療)にあたります。イギリスで医療サービスを受ける際は、緊急時を除いてまずは自分の住む地域ごとに登録されるGPの診察を受け、必要に応じてGPの紹介状に基づき専門医がいるNHS(National Health Service)の病院や私立病院(Private hospital)に行くことになります。このGPNHS系列の病院では、驚くべきことに無料で医療が受けられます。ただし、GPは予約制で、長いときは2,3週間待たなければならないそうです。また、処方箋にはお金がかかるので、OTC(Over The Counter、一般用医薬品)の方が安い場合はあえて薬を処方しません(薬局で買えると伝えるだけ)。実際、イギリスの薬局チェーン店であるBoots等では、パラセタモール(アセトアミノフェン)16錠入りが25p35円)で買えます。このため、ちょっとした風邪ならGPの診察を受けずに自分で薬を飲んで治すというのが一般的だそうです。一方、私立病院は高額な医療費がかかります。しかし、待ち時間は短く、質の高い医療が受けられる(?)という理由で、高所得者層は私立病院を利用することも多いそうです。

このように、イギリスのGPは「門番(gate keeper)」としての役割を担っています。一方、日本では診療科の一つとして存在することから、よくテレビ番組などで見るように「最後の砦」としての役割を担っているというイメージがあり、イギリスのGPと日本の総合診療医は現時点では全く違う印象があるように思います。現在日本では、医療費の問題・高齢化の問題・国際社会からの圧力などを受けて地域密着型のプライマリ・ケアを担う総合診療医を増やそうという流れがあるようです。病院に行く前にまず患者自身がどの診療科に行くか判断しなければならない日本の現状を考えると、自分の健康状態を近くで専門的に把握してくれるGPのような医者がいることは、上に挙げた社会問題を解決するためだけでなく、患者に最適な医療を提供するためにもよいことだと思いました。
一方で日本の医療制度も負けていないと思います。例えば、明らかに眼に問題があるときなどはGPを介さずに直接眼を専門とする眼科を受診できた方が良いように、イギリスと違って直接専門医のもとに行けるシステムがあることはとても便利なことだと思います。

僕がお世話になったのは、North End Medical Centreという病院で、政府からのお金で暮らせるマンションが立ち並んでいるような比較的貧しい地域にある病院です。そのため、有給休暇を申請するための証明書が欲しいという方や、病気で働くことができないということの証明書が欲しいという方もいて、GPの仕事の幅がより広いなと感じました。たまに患者さんとバトルすることもあるようです。診察時間は基本的に一人あたり約10分で、先生は午前中に16人、1時間の昼休憩を挟んで午後に16人という流れで診察を進めていましたが、皆予約をしてやっとの思いで病院に来ているので、診察が10分で終わることはほとんどなく、かなり忙しそうでした。(先生方は、無料だからこんなに混むのであって、少しでもお金を取るようにすれば患者の数は絶対減る!とおっしゃっていました。)また、総合診療というだけあって、日本であれば整形外科、皮膚科、精神科、産婦人科、消化器内科、循環器内科に直接行くような症状の方々を幅広く診察していたのも印象的でした。他にも、この病院では糖尿病クリニックや赤ちゃん (+その母親)クリニックなどもやっていて、それぞれGPだけれど糖尿病や小児を専門的に診るという先生方もいらっしゃいました。患者教育が必要な分野ではかかせない存在だと思います。

North End Medical Centre(GPによるクリニック)

Charing Cross Hospital(インペリアルカレッジの病院の一つ。専門医がいるNHSの病院)


見学内容
患者さんの同意のもとに、診察室に同席させてもらい、先生が診察を進める様子を見学させていただきました。先生が診察前や診察後に患者さんの既往歴や治療方法について説明して下さったり、質問を投げかけられたりして(「~の第一選択薬は?」とか「日本では~に対してどのような治療をするの?」とか、時には患者さんの目の前で)、とても勉強になったとともに自分の知識のなさを痛感しました....また、薬の名前や病気の名前など、知らない医学英語が多いことにも勉強不足を実感しました。(例えば、「molluscum」の子供が来て、実際に病変部を見せてもらったのですが、「molluscum」ってなんだっけ?と思って後で調べたら「水いぼ(伝染性軟属腫)」だったりなど)
全体的にとても良い刺激になりました。

参考文献
Akiteru Takemura. The Present Circumstance of Primary Care in Japan. Quality in Primary Care (2015) 23 (5): 262-266



という、参考文献まである真面目な話でした^^

最後まで読んでいただきありがとうございました。😉






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